法人破産

公開日:2026/8/26|執筆:弁護士 末安陸斗

会社の破産を考え始めた社長がまず知りたいのは、「何をどの順番でやるのか」と「いつ終わるのか」です。

先に全体像を示します。相談から申立てまでが1〜3か月程度、申立てから手続の終了までが、調査事項のない事件でおおむね3か月。合わせて半年前後が、標準的な法人破産の期間です。調査が必要な事件では、申立て後の手続が1年以上かかることもあります。

この記事では、各段階で何が起き、社長は何をするのかを、時系列で説明します。

ステップ1:相談(ここが出発点)

弁護士に現状を伝え、方針を決める段階です。会社の債務と資産、資金があと何か月持つか、従業員の人数、代表者個人の借入と資産を確認します。

この段階で決まる大きな方針は2つです。一つは、そもそも破産か、事業を続ける道があるか。もう一つは、代表者個人を自己破産にするか、経営者保証ガイドラインで整理するかです。どちらの道を選べるかは、手元に残っている資金と時間で決まります。

お持ちいただきたいのは、借入の一覧(返済予定表)、直近の決算書、預金通帳、資金繰りの分かるものです。揃っていなくても相談はできます。

ステップ2:受任・事業停止日の決定(相談から1〜2週間)

ご依頼を受けたら、事業を停止する日(Xデー)を決めます。給料の支払日、売掛金の入金日、手形の決済日を踏まえて、従業員と債権者への影響が最も小さくなる日を選びます。

この日までは、会社は通常どおり営業を続けます。従業員にも取引先にも、まだ知らせません。情報が漏れると取引停止や取り立てが一気に始まり、段取りが崩れるためです。水面下で、従業員への説明の準備、解雇の書類、事業所の明け渡しの段取りを整えます。

ステップ3:事業停止・受任通知の発送(Xデー当日)

事業停止日の朝、従業員を集めて会社が破産手続に入ることを説明し、解雇を通知します。資金があれば、最後の給料と解雇予告手当をこの日に支払います。離職票と社会保険の手続も進めます。従業員対応の詳細はこちらの記事で解説しています。

同時に、全債権者へ受任通知を発送します。以後、債権者からの連絡と取り立てはすべて弁護士が窓口になり、社長に直接来ることはなくなります。督促に追われる日々は、この日で終わります。

ステップ4:申立ての準備(事業停止から1〜3か月)

破産の申立てには、財産目録、債権者一覧、直近の決算書と帳簿、通帳、契約書類を整理して提出します。この準備期間の長さは、資料がどれだけ揃っているかで決まります。

並行して、事業所の明け渡し、リース物件の返却、在庫や車両の処分を進めます。什器を処分し、賃貸借を解約して鍵を返すところまでを申立て前に済ませておくと、後の手続が早く進みます。

代表者個人の破産申立て(または経営者保証ガイドラインの申し出)も、この期間に同時に準備します。

ステップ5:申立て・破産手続開始決定(申立てから数日〜2週間)

裁判所に申立てを行うと、審査を経て破産手続開始決定が出ます。北九州の事案では、小倉の裁判所(福岡地方裁判所小倉支部)に申し立てるのが通常です。

開始決定と同時に、裁判所が破産管財人を選任します。管財人は地元の弁護士から選ばれ、以後、会社の財産の管理と処分はすべて管財人が行います。会社宛ての郵便物も管財人に転送されます。

このタイミングで、会社と代表者の予納金(会社は最低20万円、代表者個人は50万円程度)を裁判所に納めます。費用の全体像はこちらの記事をご覧ください。

ステップ6:管財人の調査・面談(開始決定後すぐ)

開始決定の後、代表者は管財人との面談に臨みます。会社の事業の経緯、破産に至った事情、財産の状況を説明する場です。申立代理人の弁護士も同席します。

管財人は、財産目録と通帳・帳簿を突き合わせ、財産の漏れや破産直前の資金の動きを調査します。管財人が何を見るのかはこちらの記事に詳しく書きましたが、要点は一つです。最初からすべてを正直に開示していれば、調査は確認作業で終わります。

ステップ7:債権者集会(申立てから約3か月後)

裁判所で債権者集会が開かれます。管財人が財産の状況と換価の進み具合を債権者に報告する場で、代表者は出席義務があります。

「債権者に囲まれて糾弾されるのではないか」と不安に思う社長が多いのですが、実際の集会は淡々と進みます。金融機関や保証協会の担当者が数名出席し、管財人の報告を聞いて15分程度で終わることがほとんどです。債権者が一人も来ないことも珍しくありません。

調査も換価も終わっていれば、この第1回集会で手続は終わります(廃止または終結)。財産の換価に時間がかかる場合や調査事項が残っている場合は、集会が3か月ごとに続行されます。

ステップ8:手続の終了・会社の消滅・代表者の免責

手続が終わると、会社は法人格ごと消滅します。会社の債務も、払いきれなかった税金も、会社とともに消えます。

代表者個人については、裁判所が免責を判断します。管財人の調査に協力し、財産を正直に開示していれば、免責が問題になることはまずありません。免責が確定すれば、保証債務を含む個人の債務から解放されます(税金など一部の債務は残ります)。

ここから先が、再出発です。破産後に働いて得た収入は全額自分のものになり、資格制限も解けます。

期間のまとめ

段階 期間の目安
相談 〜 事業停止 2週間〜2か月
事業停止 〜 申立て 1〜3か月
申立て 〜 開始決定 数日〜2週間
開始決定 〜 第1回債権者集会 約3か月
合計(調査事項のない事件) 半年前後
合計(調査が必要な事件) 1年以上かかることも

期間を分けるのは、準備の質です。資金が残っている段階で相談し、資料が揃い、破産直前の問題行動(やってはいけない7つのこと)がなければ、手続は最短で進みます。

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