法人破産

公開日:2026/8/23|執筆:弁護士 末安陸斗

法人破産の手続では、申立てのあとに裁判所が破産管財人を選任します。管財人は会社の財産を調べ、換価し、債権者に配当する役割を担う弁護士です。社長にとっては、自分の会社と自分自身を調査する相手でもあります。

私は弁護士2年目から現在まで、継続して破産管財人に選任されています。一方で、債務者側の代理人として申立ても行います。両方の立場を経験して分かるのは、管財人が見るポイントは決まっており、そこを押さえた申立てとそうでない申立てでは、手続の期間も社長の負担もまったく違うということです。

管財人が最初に確認するのは「財産の全体像が正直に出ているか」

管財人は就任するとまず、申立書に添付された財産目録と、通帳・決算書・帳簿を突き合わせます。

見ているのは、財産が漏れなく申告されているかです。申立書に載っていない預金口座が通帳の振込履歴から見つかる、決算書の固定資産台帳にある車両が目録にない、売掛金の回収状況が説明されていない。こうした食い違いが一つ見つかると、管財人は「ほかにもあるのではないか」という前提で調査を広げます。

逆に、すべての口座と資産が最初から開示され、過去2年分の通帳と帳簿が揃っていれば、管財人の調査は確認作業で済みます。調べる事項がなく、第1回の債権者集会で手続が終わる事件なら、申立てからおおむね3か月で終了します。調査が必要な事件では、集会が何度も続行され、1年以上かかることもあります。

破産直前の「お金の動き」は必ず調べられる

次に管財人が見るのは、支払いが止まる前後の入出金です。

破産の直前に特定の取引先だけに返済していないか。親族や知人からの借入を優先して返していないか。社長の役員報酬が急に増えていないか。会社の預金が社長個人の口座に移っていないか。これらは「偏頗弁済」や「否認対象行為」と呼ばれ、管財人には相手方から取り戻す権限があります。

社長に悪意がなくても起きる問題です。たとえば、長年世話になった取引先に「迷惑をかけられない」と最後の支払いをする。親から借りた運転資金を「親だけには返しておきたい」と返済する。気持ちは理解できますが、破産手続では他の債権者との公平を害する行為として扱われ、受け取った側に返還を求めることになります。返還を求められた親族や取引先は、社長以上に困ることになります。

相談が早ければ、こうした支払いをする前に止められます。止めたうえで申立てに至った事件は、管財人にとって調べる対象が少なく、手続が早く進みます。

帳簿と資料が揃っているかで、管財人の仕事量が決まる

管財人は会社の財産を換価するために、資料を必要とします。決算書と総勘定元帳、売掛金と買掛金の一覧、在庫と什器のリスト、契約書とリース契約、事業所と倉庫の鍵。これらが申立て時に引き継がれていれば、管財人はすぐに動けます。

揃っていない場合、管財人は社長を呼んで一つずつ聞き取り、関係先に照会をかけ、場合によっては事業所に立ち入って現物を確認します。この作業に数か月かかることも珍しくありません。その間、社長は管財人からの問い合わせに対応し続けることになり、再出発が遅れます。

資料が散逸するのは、多くの場合、資金が尽きて事務員が辞め、事業所の賃料が払えず退去を迫られてからです。つまり申立てが遅れるほど、資料は失われます。

従業員と事業所の処理が終わっているかどうか

従業員がいる会社では、解雇の手続と未払賃金の処理が管財人の大きな仕事になります。

申立て前に解雇が済み、最後の給料と解雇予告手当の支払い、社会保険の資格喪失、源泉徴収票の交付まで終わっていれば、管財人がやることは未払賃金立替払制度の証明書の発行程度です。一方、従業員が在籍したまま申立てに至ると、管財人が解雇通知を出し、従業員からの問い合わせに対応し、給料の計算をすることになります。

事業所の明け渡しも同じです。在庫や什器を処分し、リース物件を返却し、賃貸借を解約して鍵を返す。これらが申立て前に整理されているほど、管財人が負担する費用は減り、手続は短くなります。

社長が協力的かどうかは、免責の判断に直結する

管財人が最後に見るのは、社長自身の姿勢です。

破産法上、社長には管財人への説明義務があります。管財人との面談に応じ、質問に正直に答え、債権者集会に出席する。当たり前のことですが、これができているかどうかを管財人は裁判所に報告します。社長個人の破産で免責を認めるかどうかを裁判所が判断するとき、この報告が重要な材料になります。

面談で財産の話をはぐらかす、管財人からの連絡に応じない、集会に来ない。こうした社長については、管財人は免責に消極的な意見を出さざるを得ません。逆に、申立ての段階から隠さず開示し、管財人の調査に協力した社長について、免責が問題になることはまずありません。

スムーズに進む申立てには、共通点がある

管財人として見てきた事件を振り返ると、早く終わり、社長の再出発も早かった事件には共通点があります。

資金が残っている段階で弁護士に相談し、財産と債務の全体像を正直に開示している。破産直前の偏頗弁済がない。帳簿と資料が揃い、従業員と事業所の処理が申立て前に済んでいる。そして社長が管財人の調査に協力的である。

これらはすべて、申立てを準備する側の弁護士が、管財人の視点を知っていれば整えられることです。私は申立ての準備にあたり、管財人として自分が受け取ったときに「これなら確認だけで済む」と思える申立書を目指しています。

会社の破産を考え始めた段階で、初回相談(30分無料)をご利用ください。今の会社の状況で、管財人に問題視される要素があるか、申立てまでに何を整えておくべきかを整理してお伝えします。LINE またはフォームからご連絡ください。

会社の破産手続の全体像は、法人破産と代表者の債務のページをご覧ください。

初回相談30分無料

債務のご相談は、早いほど選べる手段が多く残っています。秘密は厳守します。

相談フォームで予約するLINE で相談する