個人事業主やフリーランスの方が債務超過に陥ったとき、「破産すれば事業も終わり」と考えがちです。しかし個人再生を使えば、事業を続けたまま、債務を大幅に圧縮できる場合があります。
自宅の住宅ローンはそのまま払い続けて自宅を守り、それ以外の債務だけを5分の1程度まで減らす。破産のような資格制限もなく、事業用の資産を手放さずに済むこともあります。ただし、事業収入は給与と違って変動するため、会社員の個人再生にはない論点が多い手続です。
圧縮後に返済する額(最低弁済額)は、住宅ローンを除いた債務の総額で決まります。
| 債務の総額(住宅ローンを除く) | 返済する額 |
|---|---|
| 100万円未満 | 全額 |
| 100万円以上 500万円未満 | 100万円 |
| 500万円以上 1,500万円未満 | 総額の5分の1 |
| 1,500万円以上 3,000万円未満 | 300万円 |
| 3,000万円以上 5,000万円以下 | 総額の10分の1 |
たとえば債務が1,000万円なら、返済するのは200万円です。これを3年で分けると月額約5万6,000円になります。
ただし、手元に残す財産の合計額がこれを上回る場合は、財産の額まで返済額が引き上げられます。事業用の車両や設備、保険の解約返戻金、売掛金などが財産として計算されるため、事業主の場合はここが会社員より重要な論点になります。
住宅ローン特則は、住宅ローンだけを手続の対象から外し、従来どおり(または条件を変更して)返済を続けることで自宅を残す仕組みです。使える条件は主に次のとおりです。
事業主の場合、自宅に事業資金の抵当権が付いていることがあります。その場合は特則が使えないため、別の方法を検討する必要があります。これも初回相談で確認します。
個人再生は「将来にわたって継続的または反復して収入を得る見込みがあること」が条件です。事業収入は給与と違って変動するため、裁判所に対して収入の安定性と再生計画の実現可能性を示す資料の作り込みが必要になります。確定申告書、売上台帳、資金繰り表。ここの整理が手続の成否を分けます。
さらに、事業主には会社員の個人再生にない論点があります。
これらの論点は、申立ての前に整理しておかなければ手続の途中で行き詰まります。事業者の再生手続に対応している弁護士にご相談ください。
| 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
|---|---|---|---|
| 債務の減り方 | 将来の利息をカット。元本は減らない | 元本を5分の1程度まで圧縮 | 支払義務が免除される |
| 自宅 | 残せる | 住宅ローン特則で残せる | 原則、手放す |
| 事業の継続 | できる | できる | できる場合もあるが、資産は処分される |
| 資格制限 | なし | なし | 手続中は一部の資格に制限 |
| 裁判所 | 使わない | 使う | 使う |
債務の一覧、事業の収支、財産、住宅ローンの状況を確認し、個人再生が使えるか、任意整理や破産の方がよいかを判断します。
債権者に受任通知を送ります。この時点で督促と返済が止まります。並行して、確定申告書や売上台帳などの資料を集めます。
財産目録、債権者一覧、収支の資料を整えて裁判所に申し立てます。事業の継続性を示す資料をここで提出します。
返済額と返済期間を定めた計画案を作成します。裁判所が選任する個人再生委員の指示に従い、履行テスト(計画どおりの積立て)を行います。
債権者の反対がなく計画が認可されると、計画に基づく返済が始まります。3年から5年で完済すれば、残りの債務は免除されます。
申立てから認可までの期間は、おおむね半年程度です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 弁護士費用(税込) | 77万円(分割払い対応) |
| 裁判所の費用 | 個人再生委員の報酬として20万円。このほか印紙・郵券・官報公告費で3万円程度 |
個人再生委員は、申立てが適正かを裁判所に代わって確認する弁護士で、当地の裁判所では選任されるのが通常です。ご依頼の時点で各社への返済が止まるため、その分を費用に充てる形で進める方が多いです。詳しくは弁護士費用のページをご覧ください。
取引先に対して買掛金などの債務がある場合、その取引先は債権者として手続に含まれるため、知られることになります。債務のない取引先に通知が行くことはありません。取引を続けたい相手がいる場合は、申立て前の整理が重要です。
使える場合があります。問われるのは、年間を通して計画どおりの返済を続けられる見込みがあるかです。過去数年の確定申告書と今後の見込みをもとに説明します。季節変動が大きい事業でも、年単位で安定していれば認められることがあります。
ローンが終わっていれば残せます。ローンが残っている場合は、債権者が引き揚げる権利を持っているため、個別の取り決めが必要です。財産として返済額の計算には含まれます。
同居のご家族がいる場合、家計全体の収支を裁判所に示す必要があるため、ご家族の収入資料の提出を求められます。完全に知られずに進めることは難しい手続です。状況に応じた進め方をご相談時にご説明します。
会社の借入を連帯保証している場合、その保証債務も含めて個人再生で圧縮できることがあります。ただし会社自体の債務は別に処理が必要です。会社をたたむ場合は法人破産と経営者保証ガイドラインをご覧ください。
債務のご相談は、早いほど選べる手段が多く残っています。秘密は厳守します。