公開日:2026/8/24|執筆:弁護士 末安陸斗
来月の給料が払えそうにない。従業員にどう説明すればいいのか、解雇するにしてもどういう順序で何をすればいいのか――資金繰りに行き詰まった社長が、最も重い気持ちで抱える問題です。
従業員を守るためには、給料が払えなくなる前に会社をたたむ段取りを組み、破産の申立てまで行う必要があります。給料が払えないまま会社を放置することが、従業員にとって最も不利な結果を生みます。
未払いになった給料を国が立て替える仕組みがあります。未払賃金立替払制度といい、独立行政法人労働者健康安全機構が運営しています。
しかし、この制度には前提があります。会社が「倒産した」と法律上認められていることです。具体的には、裁判所で破産手続が開始されているか、中小企業の場合は労働基準監督署長から事実上の倒産の認定を受けている必要があります。
給料が払えない状態で会社を放置しているだけでは、この「倒産」に当たりません。従業員は未払いの給料を抱えたまま、制度を使うこともできず、会社に請求しても回収できない状態に置かれます。破産の申立ては、社長のためだけではなく、従業員が国の制度にたどり着くための手続でもあるのです。
制度の内容を具体的に押さえておきます。
立て替えの対象になるのは、退職日の6か月前から立替払を請求する日の前日までに支払日が来ている給料と退職金の未払分です。このうち8割が支払われます。上限額は退職時の年齢で決まっており、45歳以上で370万円(立替額は296万円)、30歳以上45歳未満で220万円(同176万円)、30歳未満で110万円(同88万円)です。
一方、対象にならないものもあります。賞与と解雇予告手当は対象外です。また、会社が1年以上事業を続けていたことも要件です。
つまり、この制度を使えば、未払いの給料の8割は従業員の手元に届きます。ただし解雇予告手当はカバーされないため、これは別に手当てを考える必要があります。
従業員を解雇するには、30日以上前に予告するか、予告に代えて30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。事業を廃止するための解雇であっても、この原則は変わりません。
現実には、会社をたたむ日を30日前に従業員に伝えることは難しいことが多いです。情報が外に漏れれば取引先からの支払い停止や債権者からの取り立てが一気に始まり、最後の給料を払う資金すら失いかねません。そのため実務では、事業を停止する日に解雇を通知し、同時に解雇予告手当を支払うのが基本になります。
ここで、資金が必要になります。最後の給料と解雇予告手当を合わせると、従業員10人の会社なら数百万円になることもあります。この資金が残っているかどうかで、従業員に対してできることが変わります。
従業員がいる会社を破産させるとき、実際には次の順序で進めます。
この段取りのうち、1から4は申立ての前に済ませておくのが理想です。整っていれば、管財人の仕事は証明書の発行程度で済み、従業員への立替払も早く進みます。
ここまでの段取りには、すべて前提があります。最後の給料と予告手当を払う資金、そして破産を申し立てる費用が残っていることです。
給料が払えなくなってから相談に来られた場合、できることは限られます。解雇予告手当は払えず、立替払の対象にもならないため、従業員は30日分の賃金を失います。破産の費用がなければ申立てもできず、立替払制度にもたどり着けません。従業員は未払いの給料を抱えたまま、再就職の準備だけを強いられることになります。
逆に、あと2〜3か月分の資金があるうちに相談に来られれば、最後の給料と予告手当を払い、離職票を整え、破産の申立てまで一連の流れとして組めます。従業員にとっての違いは、数十万円から数百万円の単位になります。
会社をたたむ決断は、従業員への申し訳なさで先延ばしになりがちです。しかし、先延ばしにするほど従業員に渡せるものは減っていきます。
初回相談は30分無料です。従業員の人数と給料の支払日、会社に残っている資金が分かるものをお持ちいただければ、いつ事業を止めれば従業員に最後の給料と予告手当を払えるのか、その日から逆算した段取りをお伝えします。LINE またはフォームからご連絡ください。
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