会社の借入には、ほとんどの場合、代表者個人の連帯保証が付いています。会社が倒れれば保証債務が代表者に降りかかり、「会社と一緒に自分も破産するしかない」と考える経営者は少なくありません。

しかし、それが唯一の道ではありません。経営者保証ガイドラインを使えば、破産によらずに保証債務を整理できる場合があります。自宅を残せる可能性があり、信用情報にも登録されません。

ただし、誰でも使えるわけではなく、使える場合でも手続の専門性は高い分野です。このページでは、制度の仕組みから使える条件、手続の流れ、費用までを順に説明します。

こんな状況なら、ご相談ください

最後の「まだ決めていない」段階のご相談を歓迎します。選択肢が最も多いのはこの段階だからです。

経営者保証ガイドラインとは何か

経営者保証ガイドラインは、中小企業の経営者による個人保証の扱いについて、金融機関と経営者が守るべきルールをまとめたものです。日本商工会議所と全国銀行協会が事務局となって策定し、2014年2月から運用されています。

このガイドラインの中に、会社が事業を続けられなくなったとき、代表者の保証債務を破産によらずに整理する仕組みが定められています。代表者が手元の資産を債権者に差し出し、残った保証債務の免除を受ける。その計画に金融機関全員が同意すれば、裁判所の破産手続を通さずに保証債務が消えます。

法律ではなく、金融機関との合意に基づく私的整理の枠組みです。だからこそ、債権者を説得できる計画を作れるかどうかで結果が変わります。

破産との違いは4つあります

自己破産経営者保証ガイドライン
自宅原則、手放すことになる華美でない自宅は残せる可能性がある
手元に残せる資産99万円以下の現金と生活必需品99万円に加え、一定期間の生活費(年齢により最大約360万円)を上乗せして残せる可能性がある
信用情報事故情報として5〜7年登録される登録されない
官報掲載される掲載されない
裁判所の予納金管財事件として50万円程度不要(特定調停を使う場合は印紙代程度)

信用情報に登録されないことは、再起を考える経営者にとって大きな意味を持ちます。整理後にクレジットカードを作り、新しい事業のために借入をすることも制度上は妨げられません。

自宅を残せるのは、どんな場合か

「自宅を残せる可能性がある」と書きましたが、無条件ではありません。自宅を残せるかどうかは、主に次の2点で決まります。

一つは、自宅が「華美でない」ことです。経営者の生活の本拠として相応な範囲の住宅であれば対象になり、資産価値の高い邸宅は対象になりません。もう一つは、自宅を残す代わりに金融機関に差し出す弁済額が、破産した場合の回収額を上回ることです。たとえば、預金や保険の解約返戻金を弁済に充て、自宅は残す、という組み立てが典型です。

住宅ローンが残っている場合は、ローンを払い続けることを前提に、住宅ローン以外の保証債務を整理する計画を組みます。ローンの返済が続けられる収入があるかどうかも、判断の材料になります。

使える条件は3つ。特に「誠実さ」と「時期」が問われます

ガイドラインで保証債務を整理するには、次の3つの条件を満たす必要があります。

そして、この3つに共通する前提が「時期」です。会社の破産申立てと同時か、その後すみやかに保証債務の整理を申し出る必要があり、かつ代表者の手元に弁済に充てる資産が残っていなければ計画が組めません。まだ手元に資金があるうちの相談が、そのまま残せる資産の額に直結します。

使えない場合もはっきりあります

次の場合は、ガイドラインよりも破産の方が現実的です。

どちらの道が現実的かの詳しい判断基準は、法人破産と経営者保証ガイドラインの分かれ道で解説しています。

手続の流れ

  1. ご相談・資産状況の確認

    会社の債務、保証の内容、代表者個人の借入と資産を一覧にし、ガイドラインが使えるか、破産の方がよいかを判断します。

  2. 会社の手続との同時設計

    会社の破産申立てと並行して、保証債務の整理を進める段取りを組みます。どの資産を残し、どの資産を弁済に充てるかの線引きをします。

  3. 金融機関への申し出・一時停止の要請

    対象となる金融機関にガイドラインの利用を申し出て、保証債務の請求の一時停止を要請します。以後の交渉は弁護士が行います。

  4. 弁済計画案の作成・債権者との協議

    残せる資産を盛り込んだ弁済計画案を作成し、金融機関ごとに説明して同意を求めます。必要に応じて簡易裁判所の特定調停を利用します。

  5. 計画成立・残債務の免除

    全員の同意を得て計画が成立したら、計画に基づいて弁済を行い、残りの保証債務について免除を受けます。

期間は、金融機関の数と協議の進み方によりますが、おおむね半年から1年程度です。

費用の目安

項目金額
弁護士費用(税込)55万円〜(債権者数・資産の状況により見積り)
裁判所の費用不要。特定調停を利用する場合は印紙代・郵券で数千円程度

代表者個人が自己破産する場合は管財事件となり、予納金50万円程度が別に必要です。ガイドラインではこの予納金がかからない一方、計画の策定と金融機関との交渉が加わる分、弁護士の作業量は多くなります。費用は弁護士費用のページもご覧ください。

申し出の前に、やってはいけないこと

よくある質問

会社はまだ営業しています。今から相談してもよいですか

むしろその段階が最も選択肢の多いタイミングです。ガイドラインは会社の手続と同時に進めるものなので、会社をどうするかの検討と一緒にご相談ください。事業を続ける道があるなら、それを優先します。

信用保証協会の保証付き融資も対象になりますか

なります。信用保証協会もガイドラインの対象債権者に含まれます。実務上、協会の同意が得られるかどうかが計画成立の鍵になることが多いです。

自宅の住宅ローンはどうなりますか

住宅ローンは払い続けることを前提に、それ以外の保証債務を整理する計画を組みます。ローンの返済を続けられる収入があるかどうかを確認したうえで判断します。

ガイドラインで整理したあと、新しく事業を始められますか

始められます。信用情報に登録されないため、制度上は借入やクレジットカードの利用も妨げられません。整理の過程で誠実に対応したことが、再起の土台になります。

別の弁護士に「破産しかない」と言われました

法人破産と保証債務の整理は、弁護士の間でも経験の差が出やすい分野です。条件を満たしているのに検討されないまま破産を選ぶ、ということも起こりえます。セカンドオピニオンとしてのご相談もお受けします。

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経営者保証ガイドラインは、得られる結果が大きい反面、手続の専門性がきわめて高い分野です。資産の線引き、金融機関ごとの同意の取り方、会社の手続との時期の調整を同時に進める必要があります。初回相談は30分無料です。LINE またはフォームからご連絡ください。

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