法人破産

公開日:2026/8/26|執筆:弁護士 末安陸斗

破産するにもお金がかかる。それなら、会社をこのまま放置してしまえばいいのではないか――法人破産の費用を知った社長が、次に考えることです。

実際、事業を止めた会社を放置することは、物理的には可能です。会社が何もしなくても、誰かがすぐに逮捕しに来るわけではありません。しかし放置は「解決を先送りにする」のではなく、「解決できない状態を固定する」選択です。何が起きるのかを、会社・社長個人・家族の順に説明します。

会社の債務は、放置しても消えない

まず会社です。事業を止めて連絡を絶っても、会社の債務はそのまま残ります。

債権者からの督促は続き、やがて訴訟になります。会社が応じなければ債権者の主張どおりの判決が出て、会社名義の預金や財産は差し押さえられます。税金と社会保険料の滞納には延滞税・延滞金が加算され続け、税務署と年金事務所の差押えも並行して進みます。

「会社に財産が何もなければ、差し押さえられても実害はない」と思うかもしれません。それは一面では事実です。しかし、だからこそ債権者の請求は財産のある方へ向かいます。連帯保証をしている社長個人です。

「休眠」は解決策ではない

放置とよく混同されるのが休眠です。休眠とは、事業を停止したことを税務署や自治体に届け出て、会社を残したまま活動を止めることをいいます。

休眠が意味を持つのは、債務のない会社です。将来また事業を再開するかもしれない会社を、費用をかけて清算せずに残しておく。そのための仕組みです。

債務が残った会社を休眠にしても、何も解決しません。債権者は休眠届と関係なく請求と訴訟ができ、社長の保証債務もそのまま残ります。「休眠にしたので大丈夫」という状態は存在しないのです。

なお、長期間登記のない会社は、法務局の職権でみなし解散として扱われることがありますが、これも債務を消す手続ではありません。解散しても清算が終わらない限り、債務は残り続けます。

社長個人は、逃げ場のないまま追われ続ける

放置の本当の問題は、社長個人に起きます。

金融機関からの借入は、社長が連帯保証しています。会社が払わなければ、請求は社長個人に来ます。督促を無視すれば訴訟になり、判決が確定すれば、社長個人の預金・自宅・給料が差押えの対象になります。

見落とされがちなのが、再就職後の給料です。会社をたたんで勤めに出た場合、その給料は手取りの4分の1まで差し押さえられ続けます。保証債務が数千万円あれば、働いても働いても返し終わりません。破産して免責を受けていれば全額自分のものだった給料が、放置を選んだために削られ続けるのです。

債権が債権回収会社(サービサー)に譲渡されて、何年も経ってから請求が再開されることもあります。時間が経てば忘れてもらえる、ということはありません。

従業員と取引先には、より直接的な損害が出る

従業員がいた会社の放置は、さらに深刻です。

未払いの給料を国が立て替える未払賃金立替払制度は、破産の申立てか、それに準じる倒産の認定が前提です。会社が放置されている状態では、従業員はこの制度を使えず、未払いの給料を抱えたまま取り残されます。離職票が発行されなければ、失業給付の受給にも支障が出ます。

取引先の売掛金も宙に浮いたままです。破産手続があれば、取引先は貸倒れとして損金処理する根拠を得られますが、放置ではその区切りもつきません。

保証債務は、社長が亡くなると家族に相続される

放置の末路として、最も重いのがこの問題です。

保証債務は、社長が亡くなると相続財産として配偶者と子に引き継がれます。何年も前に止めた会社の保証債務が、社長の死後、突然家族への請求として現れる。実際に起きていることです。

家族は相続放棄をすれば債務を引き継がずに済みますが、相続放棄は原則として相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があり、自宅などのプラスの財産も一緒に手放すことになります。社長が生前に破産して免責を受けていれば、家族が引き継ぐ債務はそもそも存在しませんでした。

放置とは、自分の問題を家族の問題に変えて先送りすることでもあるのです。

「費用がないから放置」になる前に、できることがある

ここまで読んで、「それでも破産の費用が出せない」と感じた方がいるはずです。

だからこそ、資金が完全に尽きる前の相談に意味があります。会社に数か月分の運転資金が残っている段階なら、破産の費用を確保したうえで、従業員の給料も、社長個人の手続も含めて設計できます。売掛金の回収や資産の売却で費用を捻出できることもあります。

すでに資金がほとんど残っていない場合でも、諦める前に一度ご相談ください。状況によって取れる手立てが残っていることがあります。少なくとも、社長個人の破産だけでも行えば、保証債務の追及と相続の問題は断ち切れます。

初回相談は30分無料です。「もう放置するしかない」と思っている状態こそ、お聞かせください。LINE またはフォームからご連絡ください。

法人破産にかかる費用の内訳はこちらの記事、会社を破産させたとき社長がどうなるかはこちらの記事で解説しています。

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