個人再生と家計の改善
個人再生を成功させるには家計の改善が最も重要です。
自己破産であれば、借金はゼロになるので、家計改善は免責調査との関係で問題になるに過ぎません。つまり、ギャンブルや浪費がなければ良く、家計余剰がほとんどなくても、免責されます。
任意整理は、借金を返済していく手続なので、もちろん家計改善は重要ですが、裁判所が家計を審査するということはありません。
これに対して、個人再生は、減額(原則5分の1・最低100万円)した借金を返済していく手続なので、返済できるかどうか(=履行可能性)を裁判所が審査するという特徴があります。
多重債務に陥っているということは無駄な支出が存在するということです(もし、無駄な支出が存在しないのに多重債務に陥っているのであれば、そもそも収入が足りていないということですから、自己破産が適切です。)。
個人再生で借金を減額するからといって、今までと同じ生活レベルを維持しようとするのは間違いです。
個人再生という制度への信頼を維持するためには、裁判所が再生計画を認可しておきながら、途中で挫折するという事態は望ましくありません。そのため、裁判所は、家計余剰が継続的に出せるかを相当厳しく見ています。
子どもに関する支出
個人再生は、住宅ローンを支払い、子どもがいる家庭が多いので、もともと支出が多い傾向にありますが、特に、子どもの習い事や部活動などの課外活動費用が家計を圧迫しているケースが多く見られます。
試合の遠征費や送り迎えのガソリン代、親同士の交際費などは毎月発生しますので、子どものためのものだからといって、削減対象から外してしまうと、家計改善が難しい場合もあります。
再生計画の履行可能性は、単純に家計余剰が出ているかという算数の問題なので、それを削らなければ余剰が出せないのであれば、子どものための支出であっても、削らざるを得ません。
子どもに習い事や部活動を継続させたいというお気持ちは分かりますが、それを優先するのであれば、自宅を諦めて、自己破産を選択することが必要になる場合もあります。
また、将来の進学費用についても考える必要があります。再生計画の履行期間中に進学が予想される場合などは、受験料、入学金、授業料、引っ越し代などを用意することができるかも、審査対象になります。
携帯料金
継続的に家計余剰を出すためには固定費を下げることが重要です。
最近では、一人一台スマートフォンを持つことが多くなり、携帯料金が多額になっている家庭が珍しくありません。
家族全員の契約を格安スマホに切り替えるなどの見直しを行えば、家計支出を相当程度削減できる場合があります。
交際費
交際費が多すぎる例も、かなり見受けられます。
個人再生は、家庭を持つ人が選択することが多い手続きなので、毎日飲み歩くなどの浪費は少ないのですが、子どもの親同士の交際や、親戚付き合いなどで、贈り物をしたり、お祝いを渡したりといった支出が多くなっていることがあります。
毎月家計表を付けてみると、こういった支出も、必ずしも臨時支出というわけではなく、意外と頻繁にしていることに気づくことがあります。
贈答やお祝いは、冠婚葬祭では仕方ない面もありますが、それ以外は、本当に必要なものかを十分に考え、不必要な支出は徹底的に削るようにしましょう。
正確な家計表を
個人再生では、再生計画の履行期間中の予測家計が審査されますので、手続期間中は、正確な家計表を継続的に作成し続ける必要があります。
1か月の収支を完璧に記録して家計表を作成するのはかなり大変で、しかも、個人再生の認可が下りるまで継続する必要があるのです。
書類作成の負担は自己破産以上に重いので、覚悟を決めて臨む必要があります。