ほとんどの人は免責される
福岡地方裁判所における平成30年の破産申立件数は2048人であるのに対し、免責不許可件数は7件です。
免責不許可の数は、全国どこの裁判所でも年間数件程度で、ほとんどの人は免責されているのが現状です。
これは、ギャンブルや投資の失敗、浪費行為で借金を増大させた場合でも同じです。
しかし、実際にどのようなケースで免責が許可されているのかを知らないと、不安は解消されないと思います。
そこで、この記事では、当事務所が取り扱った事件で、実際に免責を許可された事例をご紹介します。
2000万円以上を競艇・競馬・パチンコにつぎ込んだ人
2000万円以上を競艇・競馬・パチンコにつぎ込み、妻にも離婚された男性。
借金は1500万円を超え、養育費も支払えない状況に陥っていました。
彼が借金をしてギャンブルをするようになったのは10年以上前で、一度は妻の協力もあって完済しましたが、その後、妻に隠れて再びギャンブルをするようになってしまいました。後から考えれば、完全にギャンブル依存症だったと思います。
最終的にはヤミ金や友人・知人からも借金をして、とうとう貸してくれるところがなくなってから、弁護士に相談しました。
あまりに異常なギャンブルへの支出で、破産管財人は選任されましたが、一切のギャンブルを止め、毎月収入の範囲内で生活できていることを説明し、免責が許可されました。
ギャンブルや風俗で1000万円以上の借金→しかも2度目の破産
ギャンブルや風俗で1000万円以上の借金を作った中年男性。
彼は、若い頃にも同じ原因で借金を作り、過去に1度自己破産していました。
過去に自己破産していることから、2度目は認められないのではないかと思っていましたが、収入が低く、任意整理や個人再生では返済が厳しいことが分かりました。
しかし、弁護士としては、2度目の自己破産であっても、ギャンブルや風俗を止め、きちんと破産管財人に協力すれば、免責される可能性が高いと思いました。
2度目の自己破産で、金額も高かったので、破産管財人が選任されましたが、毎月家計表を作成し、収入の範囲内で生活することで、無事、免責が許可されました。
買い物依存症で500万円以上の借金→さらにスマホの転売多数
ストレスからの買い物依存症で服や電子機器など、不必要なものを通販で買いまくり、自宅に段ボールが山積みになっていた男性。
借りて返すを繰り返す自転車操業を続けていましたが、とうとう返済ができなくなり、スマホの転売に手を出しました。
最初から転売するつもりでスマホを割賦払いで新規契約し、売却して現金化するようになりました。
最初から支払えないと分かっていてスマホを割賦購入するのは一種の詐欺で、その件数も多数にのぼり、悪質といえます。
しかし、本人は、弁護士に相談に来た時点で相当反省し、一切の浪費を止めると誓いました。
破産管財人が選任され、浪費で購入した未使用の物品を処分することになりましたが、管財人の仕事に誠実に協力した結果、免責は許可されました。
【結論】借金の原因はあまり心配しなくて良い
相当多額のギャンブルや浪費があっても、自己破産で免責が認められていることがご理解いただけたと思います。
現場の弁護士の実感としては、借金の原因がどんなものでも、あまり免責の心配はしなくて良いと思います。
私も、弁護士になってから、相当の数の自己破産を見ていますが、免責不許可はまだ見たことがないくらいです。
ただ、以下のようなケースでは、免責不許可になるリスクがあります。
- 財産を隠す
- 一部の借金だけ隠す
- 破産管財人に嘘をつく
つまり、現在の裁判所の運用は、破産制度の悪用や裁判所を欺く行為には厳しいが、借金の原因には寛容と言えます。