概要
貸金業者やクレジットカード会社と交渉して、将来金利をカットしたり、月々の返済額を下げたりする手続です。
裁判所に申し立てる自己破産や個人再生を法的整理と呼ぶのに対して、裁判所を通さないので任意整理と呼ばれています。
金利のカットや月々の返済額の減額は話合い次第ですが、多くの貸金業者は弁護士との交渉には応じてくれます。ただし、取引期間が短かったり、訴訟になっていると交渉が難航する場合もあります。
交渉する業者を自由選択できるのが特徴で、自動車ローンや奨学金、友人知人からの借金を除外することができます。
また、裁判所を通さないため、所得証明や家計表を用意する必要がなく、家族に内緒にしやすい手続です。
ただし、ほとんどの場合、元金を減らすことはできない(グレーゾーン金利の引き直し計算を除く)ので、借りた額は全部返済する必要があります。
任意整理で可能な分割の回数
多くの業者は任意整理の分割回数を60回までに設定していますが、36回や84回という業者も存在します。
したがって、元金を60回払いで5年間返済できる見込みのある人(ただし和解日までの経過利息が付くことがあります)が対象になります。
5年を超える分割に応じてくれる業者も存在しており、実際に120回分割(10年払い)で和解できた例もあります。
しかし、あまり長期の分割にしてしまうと、途中で収入が減少したりして返済が滞るリスクが高くなりますので、自己破産や個人再生を選択した方が良い場合もあります。
手続の流れ
任意整理を依頼すると、弁護士は、すぐに受任通知を発送して返済を停止します。
これにより、債権者は、取立行為が禁止されますので、日々のストレスから解放されます。
各債権者から債権調査票を提出してもらい、現在の負債残高を確認します。
この間、返済は止まっていますので、弁護士費用を分割入金をしていただきます。
債権調査+弁護士費用の分割払いが完了したら、和解交渉をします。
和解できたら、和解書を取り交わします。和解書には、弁護士が署名押印します。
和解書の取り交しが完了したら、和解したとおりに返済を開始します。
任意整理で支払うものとカットできるもの
- 元金
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任意整理では、元金は全額支払うことになります。元金を減額する交渉をしても、金融機関が応じることはまずありません。
- 遅延損害金
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既に滞納している場合、遅延損害金を支払うことになるケースが多いといえます。ただし、遅延損害金をカットしてくれる業者も存在しています。
- 和解日までの経過利息
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弁護士に任意整理を依頼してから和解日までの経過利息が発生します。最近は、この経過利息をカットしてくれない業者が増加しています。そのため、弁護士に依頼してから和解するまでの期間(弁護士費用を分割払いする期間)が長くなりすぎると、経過利息が多額になることがあります。
- 将来利息
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和解した後に発生する利息(将来利息)はカットできることが大半であり、これが任意整理をする大きなメリットです。利息の発生がなければ、支払総額を大幅に下げることができます。
任意整理の実例
- S社130万円(毎月4万円)
→毎月1万6,000円に減額 - A社90万円(毎月2万4,000円)
→毎月13,000円に減額 - C社200万円(毎月3万5,000円)
→毎月24,500円に減額
9万9,000円の返済が5万3500円に減額
- R社200万円(毎月6万3,000円)
→毎月3万4,000円に減額 - T社45万円(毎月1万2,000円)
→毎月7,500円に減額
7万5,000円の返済が4万1,500円に減額
- C社300万円(毎月12万円)
→毎月3万8,000円に減額
12万円の返済が3万8,000円に減額
任意整理ができない場合
- 住宅ローン
住宅には抵当権が付いているので、弁護士が介入すると、自宅を失ってしまいます。
住宅ローンの返済が厳しい場合には、個人再生を検討しましょう。 - 自動車ローン
自動車には所有権留保(担保)が付いているため、弁護士が介入すると、自動車を失ってしまいます。
自動車を失っても構わない場合や、所有権留保(担保)が付いていないローンであれば、任意整理できます。 - 保証人がいる債務
保証人に請求が行くため、保証人と同時にご依頼いただかないと、うまく和解できないことが多いからです。 - 既に給与の差押えを受けてる債務
給与の差押えを受けている状況では、交渉による和解の余地が乏しい場合が多いからです。 - ヤミ金
貸金業登録をしていないヤミ金は犯罪者なので、返済の約束をすることは適切ではありません。
- 個人間の貸借
個人間の貸借はご依頼いただくことはできますが、貸金業者との任意整理とは別料金となっております。
任意整理のQ&A
- 任意整理とはどういう手続ですか?債務整理とは違うのでしょうか?
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債務整理は、自己破産・個人再生・任意整理といった借金を整理する手続全般を指します。任意整理は、貸金業者と個別交渉して、毎月の返済額を減らしたり、将来の金利をカットしたりする手続です。
- どういう場合に選択しますか?
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任意整理では、3年~5年程度で借金を返済していくことになりますので、毎月の返済が可能であること、安定した収入が見込まれることが必要です。
- 任意整理では、法律事務所に何回行く必要がありますか?
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法律相談時はご来所いただく必要がありますが、ご依頼後はご来所いただく必要はありません。全て電話、メール、LINE、郵便でのやり取りになります。
- 任意整理ならクレジットカードを残すことができますか?
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任意整理は、どの業者と交渉するかを選ぶことができるので、一部の業者だけご依頼いただかないということもできます。それによって、しばらくはクレジットカードを使用することができますが、任意整理をすると、信用情報には登録されるので、いずれ利用停止になる可能性があります。また、任意整理をする場合でも、借金問題を解決するためには、クレジットカードは一切利用しないようにしていただいた方が良いと思います。
- 奨学金は任意整理できますか?
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できる場合もありますが、日本学生支援機構や地方自治体の奨学金は営利を目的としておらず、弁護士を介さなくても、相談に応じてくれる可能性が高いので、まずはご自身でご相談されることをお勧めいたします。
- 10年分割とか、20年分割はできないのでしょうか?
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ほとんどの貸金業者は最長5年までしか和解に応じてくれません。業者よっては、5年を超える分割(7年~8年)に応じてもらえるケースもありますが、ほとんどの場合、10年~20年分割は不可能です。10年~20年の分割でなければ返済できないような場合は、弁護士としても、自己破産や個人再生をお勧めします。
- 任意整理をすると借金は減額できるのでしょうか?
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過去に、グレーゾーン金利(利息制限法の上限金利を超える金利)の取引(キャッシングに限る)があれば、正しい利息で計算し直す(引き直し計算)ことによって、減額できる場合があります。しかし、おおむね平成19年~21年頃には、どの貸金業者も正しい利息に修正していますので、平成22年以降の取引しかない場合には、元金を減額することはできません。ただし、現状、将来金利はカットしてもらえることが多いので、支払総額は大幅に減額することが可能です。
- どのような交渉の仕方をするのでしょうか?
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貸金業者によって異なりますが、債務総額、ご収入、職業、勤務先、家族構成、住宅ローンの有無、家計収支などの支払能力に関係する情報を相手に開示して交渉する場合もあります。
- 任意整理に応じてくれない金融機関はありますか?
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消費者金融、クレジットカード会社、銀行保証会社などは、基本的に任意整理に応じてくれます。ただし、取引期間が短い場合(例:1年未満)、12か月~24か月といった短期の和解しかできないことはあります。
- 将来の金利をカットできない場合もありますか?
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ほとんどの貸金業者は、弁護士が交渉すれば、将来金利のカットに応じてくれますが、取引期間が短かったりすると、将来金利を主張される場合もあります。任意整理は、あくまで話合いで和解を目指すものなので、100%の予測をすることはできません。
- 経過利息とは何ですか?
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弁護士に依頼してから和解が成立するまでの間、利息が発生し続けます。これが経過利息です。業者によっては経過利息をカットできる場合もありますが、最近は、できない場合が多いので、弁護士費用の積立てに時間を掛けすぎると、利息が大きくなってしまいます。
- 自動車ローンや住宅ローンは任意整理できますか?
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これらのローンには、担保(所有権留保や抵当権)が付いているため、弁護士が介入すると、自動車が引き揚げられたり、住宅が競売に掛けられたりします。そのため、これらを維持する場合には、任意整理することはできません。また、
- 家族に秘密で進められますか?
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任意整理は、家族に秘密のまま進めることができます。ただ、家計を改善するためには、同居のご家族には話した方が良い場合もあります。
- 訴訟を起こされたのですが、任意整理できますか?
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任意整理は話合いなので、訴訟を起こされていても可能です。ただし、交渉が難航する場合もありますので、できるだけ、訴訟を起こされる前にご決断されることをお勧めします。
- 判決を取られたのですが、差押えを回避することはできますか?
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判決を取られても、預金口座や勤務先が知られていなければ、差押えを受けないこともあります。また、任意整理をすることによって、話合いの余地があることを伝えれば、差押えを控えてくれることもあります。
- 任意整理すると、銀行口座は凍結されますか?
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銀行からの借金を任意整理する場合には、その銀行の口座が凍結されますが、銀行からの借金を任意整理しない場合には、凍結されません。
- 任意整理では支払いが苦しくなったので、自己破産や個人再生に変更できますか?
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可能です。任意整理で和解する前であれば、任意整理のための弁護士費用は、そのまま自己破産や個人再生の弁護士費用に流用できますので、費用が二重にかかることはありません。和解した後に方針変更する場合は、新たに費用が発生します。
- ヤミ金融の任意整理はできますか?
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ヤミ金は無登録の違法金融業者であり、多くの場合、不正に取得した「飛ばし携帯」や「飛ばし口座」を利用する犯罪者です。したがって、法律上は元金の返済義務もありません。このような業者に返済を前提とする和解交渉をすることは、犯罪を助長することになるので、任意整理はできせん。ヤミ金業者については、ご依頼いただいた場合、弁護士が取立てを止めるように警告することになります。ファクタリング・後払い業者も、実質的な違法金利を取るヤミ金業者のことがあります。この場合も、同じ対応になります。
- 親戚や知人からの借金を任意整理できますか?
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当事務所では、銀行、消費者金融、信販会社(クレジットカード会社)からの借金を対象とする和解交渉を任意整理と呼んでおります。親戚や知人の方から借りられたものでも、交渉することはできますが、任意整理とは異なる料金をお見積りさせていただいております。
- 国民健康保険料や税金は任意整理できますか?
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できません。国民健康保険料や税金など、国に対する債務は、性質上、任意整理をすることはできません。ただし、分割払いに対応してくれるケースもあるため、市町村等の担当窓口に相談されることをお勧めします。
- 弁護士費用は何回まで分割できますか?
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任意整理では、和解日までの経過利息の付加を求められることが多いため、交渉開始が遅延すると、利息が増大してしまいます。そのため、弁護士費用は、原則として、4か月~6か月以内を目安として完済していただいております。ただし、経過利息をご了承いただけ、訴訟リスクも少ない場合は、それ以上の分割にする場合もありますので、どうしても難しい場合には、ご遠慮なく、ご相談ください。
- 任意整理で途中まで支払いましたが、滞納してしまいました。もう一度同じ業者を任意整理できますか?
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交渉できる場合もありますが、一度挫折している以上、自己破産か個人再生をお勧めする場合が多いと思います。
- 任意整理で5年払いにした場合、途中で一括返済できますか?
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可能です。事前に債権者に連絡を入れてから一括返済してください。
- 任意整理をお願いしましたがキャンセルできますか?
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弁護士への依頼はいつでも解約(解任)することができます。しかし、通常、ご依頼いただいた日に受任通知(支払停止通知)を発送いたしますので、弁護士を解任しても、滞納状態になっていますので、一括請求がなされる可能性があります。元の分割払いに戻せるかどうかは、各債権者の判断になりますので、弁護士解任後、ご自身でお問合せいただくことになります。
- 任意整理の返済は、法律事務所に支払うのでしょうか?
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当事務所では、ご依頼者様から金融機関指定の口座へ直接返済していただいております。法律事務所によっては、返済代行を行っているところもありますが、1社あたり1,100円程度の代行手数料がかかることが多く、5社だと5,500円になり、ご依頼者様の負担になります。任意整理は、将来金利と返済月額をカットして、生活再建を図るものですから、手数料を徴収して返済代行を行う法律事務所へのご依頼はお勧めできません。
- 保証人に迷惑を掛けずに任意整理できますか?
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あなたが任意整理すると、保証人の方は債権者から一括請求を受けることになります(ただし、日本学生支援機構は分割払いのまま)。保証人が存在する場合は、保証人の方も一緒に任意整理するなどの対応が必要になります。
- 任意整理はただのリスケなのでしょうか?
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弁護士が介入すると、返済と督促を止めることができるので、その間に家計改善を図ることができます。また、将来金利のカットに応じて貰える可能性が高いというメリットもあります。
弁護士費用
- 着手金
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- 44,000円/1社(140万円未満)
- 66,000円/1社(140万円以上・訴訟係属・債務名義あり)
- 報酬金
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- 元金又は遅延損害金を減額できた場合、減額できた額の11%が報酬金となります。
- 将来金利のカットに対しては報酬金は発生しません。